内なる子ども2
前回でてきたストロークということば、分かりやすく「愛情」としたが、ここでもう少し詳しく「ストローク」という概念を説明したいと思う。
ストロークというのは、『他者の存在を認め、その認めたことを表現するための言動』。
つまり、「私はあなたを認めていますよ」というメッセージのやりとりをいう。
親と子どもといった関係だけではなく、あらゆる人と人とのふれあいや関わりのかたちを示す概念である。
このストロークには、プラスのストロークとマイナスのストロークがある。
プラスのストローク(もらうとハッピーな気分、元気が出る、気持ちいいと感じる)
◆身体表現・・・抱きしめる・握手する・なでる etc.
◆言語表現・・・ほめる・励ます・慰める・共感する etc.
◆非言語表現・・微笑む・うなづく・見守る etc.
マイナスのストローク(もらうとアンハッピーな気分、落ち込む、痛みと感じる)
◆身体表現・・・なぐる・蹴る・性的暴力 etc.
◆言語表現・・・罵倒する・批判する・悪口 etc.
◆非言語表現・・見下す・軽蔑・睨む・嘲笑・無視 etc.
マイナスのストロークをもらうくらいなら何もいらない、と思うかもしれないが、
ストロークの法則= 『たとえマイナス・ストロークであっても、全くもらえないよりはまし』
となる。
子どもの場合、親に無視されるくらいならイタズラをして怒られることを選ぶ、というように。
また、条件つきのストロークというものがある。
条件付きのプラス ストローク
◆親のいう通りにするからいい子
◆〇〇大学へ入れたから出来のいい息子
◆仕事と家事を両立しているからいい妻 etc.
条件つきのマイナス ストローク
◆テストで90点以上とらないと駄目な子
◆寝たきりなら生きている価値がない
◆〜しないと一人前ではない etc.
以上のように、あるがままの自分を認めてくれるのではなく、条件を満たしてはじめて認めてもらえる、という言動を条件つきストロークという。
そしてインナーチャイルドは、主に親からもらうストロークによって形成される。
子どもは与えられるストロークによって、親を安心させようとする。そして、自分の役割として担った「偽りの自分」を精一杯演じている。
そんなとき大人はどう見ているかというと、お調子者でふざけてばかりいる陽気な子、聞き分けがよく手がかからない良い子、常に私の見方になってくれる優しい子、といったように表層的な評価を下し子どもを理解しているつもりになっている場合が多い。
すると子どもは、ますます自分で担った役割を強化してゆく。
やがていつしかその「役割」が自分と同化し、すでにその役を演じる必要のない立場となっても、その役柄を降りることを忘れてしまう。
そして大人になっても、その役を演じ続ける自分が本来の自分であるかのように錯覚してしまうのだ。
もちろんこうした傾向はどの家庭の子どもも少なからず持っているもので、子ども時代に必死に身につけた、生きる手段としての役割が全て悪いというわけではない。
その仮面が後々に個性となったり、または能力や特技に生かされる場合も少なくはない。
しかし問題になるのは、こうして子ども時代に身に付けた「親からストロークをもらうための手段」が、大人になってからも逆に自分自身をがんじがらめに縛る鎖となり、自分の自然な心で生きることを阻む場合である。
幼少期からずっと持ち続けている「役割」が「シバリ」となり、その人の生きづらさの原因となっているケースである。
子どもというのは、家庭環境がどのような状況であっても、たいてい何とか育ち、困難を乗り越えて大人になってゆくものである。しかし、場合によっては青春期に解消しないまま、問題を抱え続けてしまうこともある。
特に、常に強い緊張を強いられる家庭においては、その過程で、感情を押し殺す子どもになったり、優等生を演じる子どもになったり、親を援助する子どもになったりと、その子なりのさまざまな役割を引き受けるようになる。
その結果、子どもの頃から親や周囲の人たちのために、自由な子どもらしさを出すことを犠牲にして育ってゆく。子どもなりに精一杯、我慢しいろいろなことに耐えながら成長していくのである。