脳に投影される世界 (1)


脳は左脳と右脳はそれぞれ異なる機能を有している。

 

左脳は意識脳とも言われ、言葉で考え、言葉で記憶し、言葉で情報を伝える。左脳は無意識脳とも言われ、イメージで考え、イメージで記憶し、イメージで情報を伝える。

 

言葉、理論的指向は左脳優位、直感、空間認知は右脳優位、などの見方もあり、なんとなく左脳の方が知的な雰囲気が漂っている。

 

駄菓子菓子、左脳は知性脳ぶっているけれど、がかなりいい加減なヤツであり、右脳は見かけ?より、はるかに優秀な潜在的能力を秘めているらしい、ということをお伝えしたい。


その前に脳の働きについてざっと説明する必要があるので、脳の表面に、私たちが体験する「世界」がどのように表象されているか?という脳機能の話しを少々。

人の大脳は、かなりきちんと機能的に分化されており、この機能はこの領域でというのがほぼ決まっている。
したがって、人が五感を通じて受け取る「世界」がどのように脳に投影されるか、その五感からの情報も、あらかじめ決められた領域に従って処理される。

まず、脳全体を縦にまっぷたつに割ると、左脳と右脳に分かれる。それは、脳梁という神経の束で連結している。
さらに左脳と右脳に中心から真横に、今度はちょっとだけ切れ目を入れると、前半分と後ろ半分に分かれる。
つまり十文字に脳を分けた状態を想像する。

脳を前半分と後ろ半分に分けている切れ目を「中心溝」といい、その深い溝によって脳は前後に隔てられている。

この「中心溝」のすぐ前側には「一次運動野」と呼ばれる領域があり、随意的に動かすことのできる身体が投影されるようマッピングされている。「一次運動野のこの部分」が、「身体のこの部分」というように、ほぼ1対1対応で、「身体の運動」という体験世界が脳の中に展開される。

「一次運動野」のさらに前方には「二次運動野」と呼ばれる領域がある。人がある運動をするとき、どの筋肉をどの順番でどのように使うかをプログラミングする役割をもっている(それだけじゃないけど)。


「中心溝」のすぐ後ろ側に「一次感覚野」と呼ばれる領域がある。そこには、意識的に知覚することのできる身体感覚が、やはりほぼ1対1対応で投影されるようにマッピングされている。やはり「身体の感覚」という体験世界が、脳の中の「一次感覚野」に展開している

つまり、「中心溝」より「前側は運動、後ろ側は知覚」を受け持っているということがいえる。

その他、聴覚からの情報は則頭葉に投影され、視覚からの情報は後頭葉に投影される。
ところで、視覚機能や運動機能においては、左右の脳がそれぞれ反対側の視野・運動神経を司る。つまり、運動神経繊維の交叉によって、左脳は右側、右脳は左側の視覚情報や手や足の運動をコントロールすることになる。


左脳と右脳の機能は、それぞれある程度の独立性を持っている。

(右利きの人の場合)左脳は「言語的・分析的・顕在的な優位半球」とされ、知識や思考力、判断力を コントロールする「知性能」ともいわれる。
記憶やものごとの理解も、ゆっくり一つ一つ階段を登るよう に極めて意識的に、意図的に、論理的に行う。 

一方、右脳は「感覚的・総合的・潜在的な非優位半球」とされ、ものごとをそのまますんなりとイメージ(映像)で捕らえて取り入れる。


右脳は直感、インスピレーション、独創力、想像力、集中力に優れ、スピードが早くて大容量(瞬間記憶)であるため、「芸術(音楽、絵画、作詩・作文)脳」ともいわれる。
身体能力の高いスポーツ選手も、こうした右脳の能力が発達しているといわれる。


尚、左脳の「優位半球」と右脳の「非優位半球」というのは、相対的な能力の優劣を示しているのではなく、人の意識的な、知性の表現手段や理性の確認手段のための言語機能を担当する左脳を優位としているだけ。

以上のように、脳はそれぞれの部位によって機能的に分化されていることが分かる。
人が五感を使って経験する「世界」は、すべて脳の中に投影されるようにできている。

言い方をかえれば、人が感じ経験する「世界」は、自分の「脳の中に投影された世界」ともいえる。

ということで、これからが本題。
部位によって機能分担をもつ大脳ではあるけれど、左脳と右脳ではどうも情報の処理の仕組みが異なるようだ、ということ。

左右の脳を連結している神経の束「脳梁」を切断された患者さんを使った、認知機能に関する実験を総称して「分割脳実験」と呼ぶ。(難治性のてんかん患者さ んを対象に、左右の脳を外科的に切り離すことにより、脳の放電が脳全体に及ぶのを防ぐ治療がある。「分割脳」はこうした手術の結果。)

分離脳の患者さんは「脳梁」による相互コミュニケーションがないために、左右の脳がほぼ完全に分断されている。

この状態を利用して、左脳のみ、右脳のみに別々の情報を与えた場合、左脳、右脳がそれぞれどのように情報を処理し、その結果どのように人の「心」をつくっていくのかがわかる。(つづく)