相反する二つの心

 

「人間とは、パラドックスの体現であり、矛盾の塊である」

と言ったのは、社会学の祖として知られるオギュスト・コントでした。

カウンセリングの場面でも、しばしば人の心の複雑な仕組みを目の当たりにします。


幸福を望みながら、幸福を拒否する

人が恋しいけれど、人嫌い

分かってほしいけれど、分かってたまるか

私は嘘つきだという、正直な告白

嬉しいけれど、悲しい


背反するふたつの心が、同時に存在することもあります。

両方とも真実であり、偽りでもあるのです。

矛盾に満ちた心と向き合うことが、無意識に深く降りてゆくことにつながります。


カウンセリングという非暴力・安心・安全の雰囲気のなかで、相談者とカウンセラーの交流により、新しい気の流れと時空間が出現します。

それは両者におだやかな影響を及ぼし、すこしづつ身体的・心理的変化を促し、最終的には行動の変容に至ります。

自由で柔らかな関係性のなかで、カウンセラーは相談者が語る心の情景を大切に取り扱い、そこに創造されるものがたりを読み解き、フィードバックします。

相談者は強制されることなく、安心のなか、ゆっくりと自分のペースで心に向き合うことができます。

ときには背反する二つの心に出逢うこともありますが、恐れることではありません。

心のありのままを受け入れながら、少しずつ確実に、問題解決能力や健康性を促進し、
行動の変化を目指してゆくのがカウンセリングです。