インナーチャイルド(内なる子ども)

内なる子ども(1)

 

インナーチャイルドという言葉は、もともと英国の精神分析の独立学派の人たちが確立した概念で、日本の心理学界ではまだなじみが薄い。インナーチャイルドの翻訳語では「内なる子ども」となる。

 

 

成人を過ぎても親のコントロール(シバリ)から抜け出せず、生きづらさを抱えている人は多い。
幼少期から親や身近な人から受けた、マイナスのストローク(愛情)やメッセージに由来するものとされている。


本来子どもは、自分の感情や興味を自由に表現し、疑問や納得できないことを素直に伝えることができ、自分の感覚で人を信じることができる、そういう家庭環境で育つことが望ましいと言えるだろう。

子どもにとっては、「無条件で愛情が与えられ、安心できる場所」、つまり心の安全基地として機能している家庭がいちばん居心地がいいのだ。

 

嬉しいときには喜び、怖いときや悲しいときには泣き、寂しいときには甘え、不満なときには訴え、必要なときには助けを求め、疲れたときには心ゆくまで休むことができる。それが子どもの自然の姿(ワンダーチャイルド)といえる。

しかしそれがうまく機能していない家庭では、子どもは子どもらしく遊んだり、甘えたり、楽しんだりする機会を奪われる。そうなると、子どもは自分のことは後回しにして、自分の本当の心を押し殺してまで、家族の中で別の役割(偽りの自分)を演じ始める。

こうした子どもを、ワンダーチャイルドに対しインナーチャイルドという。
この2つの概念は、自分の子ども時代における、自分と家族(親)との関係性を解釈する上でとても理解しやすいものだと思う。

なぜ、子どもがインナーチャイルドとして振る舞わなければならないのか ?

 

それは、そうしなければ親は安心してくれず、安心してくれなければ、自分は異様な緊張感の支配する家庭のなかに身をおくことになるからである。

親が安心してくれないと
親が喜んでくれないと
親が満足してくれないと
親がリラックスしてくれないと
 

親からストローク(愛情)をもらえない


子どもは、家族が緊張を解いて落ち着くよう、そして自分もそんな家族の中で少しでも落ち着いて安心できるよう、家族の雰囲気を読み、判断し、小さな体と頭を精一杯つかって、自分の担う役割を見つけ演じるのだ。

「プラケーター」 親の愚痴を聞き慰める役

 

「クラウン」   緊張を解き空気を和ませるために、
         おどけたり間抜けを演じたりするピエロの役

 

「イネープラー」 自ら親を支え励まし世話を焼く役

 

「ロストワン」  不安な状況を回避するために、息をひそめ、
         忘れ去られた存在として振る舞う

 

他にもさまざまな役割を自分に課して、親の問題を自分で担うことにより、辛い状況をなんとか乗り切ろうとするのである。

このように、自分の存在をいちばん認めてほしい家族のなかで、子どもは自らがエスケープゴートとなり、様々な役割を演じ、痛々しいほどの努力をし続ける。