■「習慣的性格」を変える
「性格の(同心円)4層構造説」、前回から随分と日が経ってしまったので、もういちどおさらいをします。
性格の四層構造の核となる気質を「生まれつきの部分」とするならば、「狭義の性格(人格)」以降の3層は「生まれてからの環境によって形成される部分」となります。また養育者(母親)との愛着形成の有無が最大要因となる二層目の「狭義の性格(人格)」は、大人になってからではほとんど変えることができません(成人するまでの期間であれば変容は可能と考えます)。大人になって変えることができないというより、むしろ、無理に変えようとする必要がないと捉えてもいいと思います。
性格を変えるとは、三層目の「習慣的性格」を変えるということです。しかし「習慣的性格」を「気質」「「狭義の性格(人格)」の上位概念としても、「習慣的性格」が変わったからといって、「気質」「「狭義の性格(人格)」という、その人がその人であるところの基本的ベース、この世で唯一無二の「個性」といえる魂の核の部分は、ほとんど変化することはないと思います。
性格を変えたいと思う動機として「自分の性格が嫌いだから」「人から嫌われる性格だから」「損な性格だから」といったことが挙げられます。けれどもその感じ方はあくまでも主観です。どこまで正確に自分の性格を把握しているか、自分では判断がつかない場合もあります。
というわけで、性格を変えるには自分自身を知ることから始めなければなりません。
自分の生まれつきの気質は?
狭義の性格はどうなんだろう?
習慣的性格は?
人は自分のことをよく知っているようで、案外わかっていないものです。なぜかといえば、人は誰でも自分を守るために、自己を欺く心のシステムをもっているからです。精神分析の防衛機制やロジャーズ理論の自己不一致、エリック・バーンの交流分析などの概念も、そうした心のシステムを表現したものです。
自分の性格を客観的に知るための方法として、もっとも有効なのが心理検査の一つ性格検査です。性格検査には質問紙法のものや投影法などがあり、これまでひじょうに多くの検査法が考案されてきました。
私の場合、カウンセリングの過程でエゴグラムを使った性格診断を行うことがあります。エゴグラムにはさまざまな分析方法があるのですが、その人の性格傾向を知る上でも、かなりの信頼度で参考になります。ネット上でも簡易診断ができるので、試した方も多いでしょう。
エゴグラムはエリック・バーンの交流分析(transactional analysis のトランザクショナル・アナリシス)における「構造分析」、そのなかの性格構造論に基づいた性格診断方法です。エリック・バーンの弟子ジョン・M・デュセイが考案しました。
構造分析では自分の自我状態を「P(Parent)=親」「A (Adult) =大人」「C (Child)
=子ども」の3つの要素に分けますが、ジョン・M・デュセイはさらに「P(Parent」と「C (Child) 」を2つの働きに分類しました。5つの自我エネルギーを診断するエゴグラム・チェック・リストによって、性格的傾向を客観的に知ることができます。
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<5つの自我状態>
CP (Critcal Parent) =批判的な親
厳しさ 批判的 支配的 •厳格で批判的、理想を掲げ責任感が強い ・自分の価値観や信念を人に押し付ける
NP (Narturing Parent) =援助的な親
優しさ 思いやり •優しさ、思いやりに溢れ、世話好きで親切、親身になって面倒を見る •過保護・お節介、相手の自立を妨げる
A (Adult)=理性的な大人
理性的 合理的 論理的 •冷静で論理的・合理的判断ができ、状況への適切な対応ができる ・現実的対応中心、損得に敏感で打算的
FC (Free Child)=自由な子ども
自由 奔放 創造的 •自然な子どものように自由な自己表現ができ、欲求に素直で生きることを楽しむ •我がままで感情的、自己中心的
AC (Adapted Child) =従順な子ども
協調 従順 抑圧 •他人を尊重し、協調的で集団の和をたいせつにする ・従順で周囲の顔色を伺い、人に合わせて自分の気持ちを抑圧
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エゴグラムの詳細については、シリーズで掲載している<折衷主義のカウンセリング理論>の「交流分析」の項で説明するつもりです。といっても、「ロジャーズ理論」の途中でほったらかし状態、なかなか書く時間が取れないのですが、近いうちに再開の予定です。
性格(習慣的性格)を変えるためには、まず、自分がどのような性格傾向をもっているのかを客観的に認識する必要があります。自分の現在置を知らなければ、どこへ行きたいかという目的地も、目的地へのルートも定まらないからです。自分の性格を知るための方法としてエゴグラムを取り上げましたが、その他にも信頼のできる質問紙法のものではBigFive(主要5因子性格検査)やMPIがあります。
エゴグラムのように質問紙法のものは、顕在意識のみへのアプローチという点や意図的解答といった短所もありますが、「狭義の性格(人格)」「習慣的性格」を知る上では最も有効な性格検査であると考えます。
他にも自分の性格を知る方法として、心理カウンセリングがあります。セッションの過程で様々な気づきを得ることにより、それまで自覚していなかった自分の性格を洞察することが可能です。
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