4層構造による性格論(1)

 

人は生まれながらの気質(気性)をもっています。これは生涯にわたり、その人のDNAレベルで絶対に「変わらない性格」といってよさそうです。変わらない性格=気質です。

一方で、「性格は変えることができる!」という主張があちこちでなされています。どうやら「変えることのできる性格」というのも存在しているようです。

性格論には種々ありますが、「性格」という概念について、こういうものだという明確な定義はないのですね。心理学者によって、ひじょうに多様な捉え方が存在しています。

そのなかでも、「性格は変えられるのか?」という問いに、ある程度の説得力をもって答えることのできる性格論についてお話しします。

ところで、性格に良い悪いの価値基準はありません。自分の性格を知ることで、それを受け入れ、肯定し、上手に活かしながら生きることが肝要です。


<4層構造による性格論>

性格は、おおよそに分けて、「生まれつきの部分」「生まれてからの環境によって形成される部分」があります。

「生まれつきの部分」を「気質」と呼称します。その気質を核として、「生まれてからの環境によって形成される」性格が、さらに三層重なって包み込んでいると考えます。つまり、人の性格は「気質」を中心に4層構造になっているのです。


 

中心核を成す「気質」を、次の層「狭義の性格(人格)」が包み込んでいます。「狭義の性格(人格)」は、ほぼ幼少期までに形成されます。

この「狭義の性格(人格)」はほぼ100パーセント養育者の関わりによって形成されます。したがって本人に責任はありません。この人格の部分は気質と同様、成人してもそう多くは変わりませんが、しかし、大人になってそれをどのように維持しているかは本人の責任になります。おそらく「三つ子の魂百まで」とは、この変わりにくい狭義の性格を表現したものでしょう。

さらに狭義の人格の周りを、習慣によって作られた「習慣的性格」が取り囲みます。「習慣的性格」とは、日常の様々な人々の交流や経験を通じて、徐々に形成されてゆく性格です。わかりやすくいえば、「自分をとりまく人々や環境にどう接するか」という習慣的な態度をいいます。この習慣的性格こそ、「変えることのできる性格」となります

「習慣的性格」の周りを覆っている、いちばん外殻に当たる4層目の性格が「役割性格」となります。この部分は、社会での様々な場面・状況に適応するために形成された性格で、状況に応じて瞬間的に変えることができます。

たとえば、家庭・学校・会社などにおいて、家族や友人、会社の同僚や部下・上司などに対し、意識的・無意識的に変えたり変わったりする性格を指します。家庭では優しいお父さん・会社ではバリバリの営業マンなど、それぞれの役割を状況に応じて演じ分ける・・・それを役割性格と呼びます。

ではつぎに、各層の各論に移ります。(つづく)