ナルシシズム(narcissism)3

 

『ナルシシズム(narcissism)1』では、健全な自己愛と、ナルシシストを生み出す病理的な自己愛との違いについての簡単な説明、『ナルシシズム(narcissism)2』では、「自分だけは特別だ」「自分に関わるものは Good (ナルシスティック・エクステンション/自己愛の延長物)」という、健全な自己愛心理について述べてきました。

 

この記事では、以上の「基本的自己愛」に対し、病的な自己愛「ナルシシズム」とはどういうものなのか、を考えてゆきたいと思います。尚、ナルシシズムについてはまだ学術的な概念が確立しているわけではないので、私の理解している範囲での独断的考察になることをお断りしておきます。

 

 

ナルシシズムを抱えた人々

 

ナルシシズム(病的な自己愛)を抱えた人たちについて、どう呼ぶかという問題があります。とうぜん「ナルシシスト」となるのですが、これだとどうしても一般的に使われる「あの人って自分大好きなナルシストよね~」といったイメージがあります。

 

私の考えているナルシシストには、職場でよく見かける自己中なエゴイストやモラハラ人間、幾つかのパーソナリティ障害等を含む、自己愛を拗らせた人たち全般を対象としています。以降はそうした人たちを便宜上、日本の専門書や翻訳本でもよく使われている「自己愛人間(ナルシシスト)」と表現することにします。

 

自己愛人間との遭遇

 

家族や親族、学校や職場、恋人、友人関係などにおいて、かなりの確率でさまざまなタイプの自己愛人間に遭遇することになります。また、対人関係で悩んでいる人の話には、必ずといっていいほど自己愛人間が登場します。

 

自己愛人間と遭遇した最初のうちは、話上手で自信に溢れ魅力的な雰囲気を持つ相手に、たいていの場合は好感を抱きます。しかし徐々に、魅力的な見かけと裏腹に、時々垣間見える傲慢な言動に違和感を感じ始め、やがて自分がいつの間にか、彼らの都合のいいように利用されていることに気づくのです。

 

自己愛人間は社交性に富み、自信たっぷりで魅力的なタイプの人間が多く、身近な家族や友人、職場の人間だけではなく、カリスマ性を具えた有名人、政財界のリーダーや権力者のなかにもかなりの割合で存在しています。

 

一方、比較的若年層に多い自己愛人間の特徴は、自分が個性的で偉大な存在であるという密かな全能感を抱いており、その幻想が現実によって破綻することを回避するため、裏付けのない誇大自己を抱えたままイリュージョンの世界に引きこもります。

 

自己愛人間が実際に優れた能力を持っているかいないか、誇大自己を満たす裏付けがあるかないか、によってその振る舞いは異なりますが、根底に「未熟な自我」があることは同じです。

 

自己愛人間の特徴

 

自己愛人間の主な特徴6つを挙げ、その成り立ちについて考察します。

 

Ⅰ 心の奥底に潜む強烈な恥への意識

Ⅱ 人を見下す傲慢な態度

Ⅲ 絶えず周囲からの賞賛、好意、親切、特別扱いを得よ       とする

Ⅳ 嫉妬の対象を貶めこき下ろす

Ⅴ 他人を操作、利用する

Ⅵ 自己と他人との曖昧な境界

 

どのような人にでも少なからず上記のような傾向はありますが、他者にダメージを与える自己愛人間はたいていの場合、1~Ⅵほとんどの特徴を兼ね備えています。

 

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