DV 加害者の難しさ

DV = 親密な人間関係での身体的暴力・精神的暴力(モラルハラスメント)

 

家庭でのDVの相談を受けることがある。

そのなかで、DV加害者についてのカウンセリングの要望もいただくのだが、とても心苦しいけれどDV加害者の方のカウンセリングはお断りしている。

 

なぜなら、DV加害者が生まれる要因は、その人の遺伝的性質と生きる過程(家族を含めた文化的、社会的影響)で身につけた「価値観」と「信念」によるものであって、精神的な要素はほとんど関係していない。たいてい世間では普通に社会生活を送り、常識的いい人で通っている。

 

DV加害者を変えるためには、ただ一点、暴力や虐待を手段とする「権力と支配と搾取」に向かう「思考と行動」を作り変えなければならない。

 

したがって、通常の心理療法やセラピーでDV加害者に変化をもたらすことは、残念ながらほぼ不可能といってよい。

 

それどころか、かえって加害者に自己正当化の間違った解釈を与え、被害者への責任転嫁や、さらなる人心操作の術を与えてしまうもケースもある。

 

DV加害者は自分が「DV加害者である」という自覚がない。自分の行っている肉体的または精神的な暴力や虐待への認識がないので、まったく罪悪感を感じていない。

 

その「思考と行動」を治すためには、被害者からの離別宣言や裁判所命令といった外部圧力によって、加害者が自らの暴力性に向き合わざるを得ない状況をつくりあげなければならない。

 

最初の原動力として、誰かが暴力性を突きつけ変化を要求しなければ、永遠に自らの暴力性・虐待性に向き合うことができないのがDV加害者なのだ。

 

ところが暴力を告発し変化を要求しても、DV加害者は後悔や反省を伴わずにいくらでも謝ることができる。したがって、なかなか思考の変化までには至らないことが多い。

 

よくDV加害者は、被害者から別れ話など持ち出されると、大粒の涙をぼろぼろ流し土下座して謝ったり誓ったりする。しかしたいていの場合、まったく内省にはつながっていない。

 

謝罪すれば自分は当然許され、その時点で問題は完結したという思考による。やがて自分が大幅に譲歩してやったという認識に変化していく。

 

というわけで、現時点では、加害者が変わるためには、DV加害者に特化された専門的なプログラムに依るしかないように思う。それも加害者が自ら積極的に取り組むという条件付きで。

 

DV加害者プログラムについては、やはり米国における臨床研究が優れているようだけれど、日本にも専門に扱うところが増えてきており、とても喜ばしいことだ。効果については・・・うーん、なかなか難しいようではある。

 

もちろん当カウンセリングルームでは、DV被害者の方のカウンセリングについては、どのようなケースでもご相談に応じている。